『The DevOps 逆転だ!』を読んだ

The DevOps 逆転だ!究極の継続的デリバリー

『The DevOps 逆転だ!』は、ITに問題を抱えている企業が、ITを我が物として業績を上げていくまでの物語。原書は2013年、邦訳は2014年。

タイトルに「DevOps」とあったり副題が「究極の継続的デリバリー」だったりと日本語版のタイトルにはバズワードが盛り込まれているが、原書のタイトルは “The Phoenix Project: A Novel about IT, DevOps, and Helping Your Business Win” というもの。

実際、本書の中でDevOpsが登場するのはかなり後半で、デリバリーの速度を上げるための施策として登場するに過ぎない。それよりも前の段階で、まず混乱したITの立て直しが行われる。

ここで登場するのがゴールドラットの制約理論。本書の前半ではIT運用のボトルネックを特定し、それを改善するために頭をひねることになる。さらに、ITとビジネスを緊密に結びつけることで会社が業績を上げるためにITを活用できるようになっていく。

主人公が務めるパーツ・アンリミテッドは自動車部品を製造している企業で、主人公は工場の製造ラインの最適化の方法からさまざまな学びを得てITを改善していく。このような筋書きを見ると思い浮かぶ言葉は「DX」で、実際いまこの本が出版されるならタイトルにこのキーワードが盛り込まれると思う。

このように、本書は制約理論やDevOpsを学ぶための参考書なのだが、ITを題材にした小説としても一級品の出来になっている。特に面白いのは前半で繰り広げられるトラブルの山。会計システムの不具合によって給与が支払えなくなったり、電話システムが壊れて顧客と連絡ができなくなったり、POSシステムが動かなくなってクレジットカード決済を手動でやったりと、とにかく大量の障害に振り回される。そんな中でもなんとか秩序を取り戻そうと奮闘する主人公をついつい応援してしまう。

DevOpsや継続的デリバリーについて学びたくて本書を手に取ると、前置きが長くてまだるっこしく感じられると思う。しかし、これらを支える理論的背景を学ぶことができる本書は、自分にとっては学びの多い内容だった。次は『ザ・ゴール』を読んでみたい。

ザ・ゴール

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